ニュース証券、投資運用部の長友哲郎によるベトナム・マーケット・レポート「ベトナム市場2015年第3四半期決算 主要な不動産銘柄について」が公開されています(pdf)。
「ベトナムの不動産セクターは、2011 年の金融引き締め策で、大量の売れ残り在庫を抱え、2012 年、2013 年と業績が低迷したセクターでした。しかしながら 2014 年頃から業績は緩やかに回復しつつあります。」とのことです。レポートの主な内容は、
1.ベトナム不動産主要20銘柄の2015年第3四半期決算概要
2.注目銘柄分析(ビン・グループ(VIC)、キンバックシティー・グループ(KBC)、ダットサイン不動産建設(DXG)、トゥドゥック住宅開発(TDH)、技術インフラ開発(IJC))
3.不動産売上の第4四半期が最も多くなる4つの理由
4.注目銘柄の株価とVN指数の年初からの推移比較表
各社それぞれの強みを活かして頑張っている様子がよくわかるレポートです。
不動産売上の第4四半期が最も多くなる4つの理由とは?
レポートの中で不動産売り上げの第4四半期がもっとも多くなる4つの理由がかかれていました。興味深いので深掘りしたいと思います。
1.第1四半期はテト(ベトナムの旧正月で長期休暇)でお休みが多く、営業日数が少ない。
これは、ベトナムで仕事をしていると特によく感じます。テト時には1週間から2週間休みになるので、公共の祝日が少ないベトナムにあって、休みの多い非常にまれな時期です。また、テト後、旧暦の1月15日までは、大きな出費をするとその年の出費が多くなるといわれていることから、大きな契約、支払いは控えられるので、ベトナムでビジネスをする際には、第1四半期をどう乗りきるかが大きな目標のひとつです。
2.第2、第3四半期は雨期で住宅が振るわない。
これはよくわかりません。ホーチミンのほうの人の理由でしょうか?ハノイでは、この時期は秋晴れが続き、とても快適な気候になります。不動産を見て歩きたくなるシーズンかもしれません。
3.ベトナムの決算は 12 月が期末なので、第 4 四半期は会社側も販売に力を入れる。
年末前の決算時に結果を出すとテトの時にもらえるボーナスが多くなるのかもしれません。
4.テト(旧正月)前に住宅を購入する人が相対的に多く、12月は海外から国内に送金が多い。
テト前に物事を終わらせて、ゆっくりとテトをすごしたいというベトナム人は多いです。ですから、10月くらいからテトにかけて、家具屋さんは大変な忙しさになるそうです。ハノイでは9月から12月にかけて結婚式シーズンがあります。結婚と同時に新居を構えたいというカップルも多いはずです。親戚からのご祝儀などもあわせて新居を準備する家庭も多いのかもしれません。
ビングループは財閥化?
ビングループは、もともと、会長であるヴオンさんがウクライナへのインスタント麺での輸出で設けたお金ではじめた会社と聞いたことがあります。もともと、商取引からはじめたのであれば、近年の小売業への進出はなるほどという動きです。
これら小売への進出にあわせて、農業への投資、医療への投資、港湾や展示場といった公共インフラへの投資など、ビングループの動きは財閥的な組織グループをつくる可能性がある気がします。ベトナムの中で時代を少し先取りして動いているように思うからです。
このビングループの破竹の勢いは、ベトナムの長者番付2014年版トップ10に見るお金持ち像で紹介したようにベトナムの長者番付けTOP10のうち3人を輩出するほどの勢いです。
ビンマートなどの小売業の近代化の動きは、パパママショップや市場での人とのダイレクトな交流があるベトナムの懐かしい良さと相反するものです。「人から買う」から「お店から買う」へ。時代のながれとはいえ、街角に増えていくビンマートを見て、複雑な気分になるところもあります。