TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉が大詰めを迎えています。
ベトナムは、その最大の恩恵をうける国ではないかといわれています。そうだとすれば大変嬉しいことですが、どういった視点でそういわれているのでしょうか?
1. 商慣習・経済システムをグローバル化しなくてはならない
ベトナムの商慣習は独特です。ベトナムで仕事をしたことのある人なら、ベトナムのビジネス交渉がタイム・イズ・ノット・マネーであるということに同意してもらえると思います。交渉の落としどころがわからず流れることもしばしば。しかし、TPP締結のあと、世界に開かれた交渉の場で契約を勝ち取っていくためには、その交渉スタイルを変えなくてはなりません。
ベトナム人も馬鹿ではありませんから、スピードの速さがビジネスの成功につながるのであれば、おそらくすごいスピードで交渉時間は縮まるようになるはずです。
ベトナムの経済は多くの課題を抱えています。銀行の不良債権問題や貸し出し先の不透明さ、非効率な国有企業の民営化、道半ばの交通インフラ整備など課題をあげればきりがありません。しかし、この課題の多さがベトナムに有利にはたらくのではないかと多くの方はみているようです。実際、外国人株主比率の上限撤廃や株式の決済時間の短縮、外資による不動産売買の緩和など、すでに多くの規制緩和がはじまっています。
まるで、テストの点数が悪いほど、伸び代が大きいといわれているようですね。日本では『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』をもとにした映画「ビリギャル」が大変はやっているそうですが、劣等生ベトナムがアメリカや日本、シンガポールという講師を得て、一流国の仲間入りへの道ほどが縮まるとよいのですが。
2. メイド・イン・チャイナ外し
TPPでは、減税の恩恵の参加国以外の国への流失をふせぐため、あるパーセント以上の原材料をTPP圏内から調達しなくてはならないそうです。
ベトナム国内には多くの中国からの原材料が集まってきていますが、その理由もあり、ベトナム国内の生産体制が育っていない分野があります。そのひとつが衣料品の原材料、布だそうです。主要な衣料の輸出国のひとつであるベトナムですが、国内では衣料品がとても高く感じます。その理由が原材料の輸入にあるのだと思います。ベトナム国内での高品質な原材料大量生産がはじまれば、ベトナム国内の衣料品価格もさがってくれるとうれしいのですが。
また、そのほかの原材料生産も中国から移ってくる可能性があります。そうなれば、ベトナムの生産業の底上げが期待できます。
3. 民間投資の活発化
TPP参加国間の相互投資が大幅に増える可能性があります。TPP参加国は経済連携を国同士がみとめたことになりますから、投資家にとっては大きなリスクが減ります。したがって投資先の候補地として非参加国に対しての優位性があがります。タイやミャンマー、カンボジア、ラオス、インド、フィリピン、インドネシアなど、多くの競争相手がTPPに参加をしていませんので、このことが、ベトナムの優位性を大きくなります。
工場等の設立、株式投資、不動産投資など、選択肢のひとつとして、これまでは対象にもならなかったベトナムがより身近な投資先として意識されるようになると、ベトナム投資ブームの可能性もあります。インターネットの普及とともに世界の投資・投機マネーは投資先を探して飛び回っています。経済の6.5%の年間成長率が見込まれ、今は底堅いベトナム。投資マネーが世界から飛んでくる日は案外遠くないかもしれません。
TPP交渉の成立を通してベトナムがよりよく発展することを望みます。