TPPの大筋合意でベトナムは盛り上がっています。なぜならTPP成立で最も恩恵を受ける国はベトナムらしいからです。VNインデックスは、目下じりじりと強気の上昇をしており、大台の600を目指す展開です。
TPPのベトナムへ与える影響は非常にポジティブなものが多いといわれています。TPPはベトナムが中国経済への依存をバランスさせるのに役にたつという記事がありましたので、日本語でまとめてみたいと思います。(元サイト:Vietnamnet: TPP helps Vietnam balance economic dependence on China)
TPPはベトナムが中国への経済依存を改善することをサポート
ベトナムのTPP(環太平洋パートナーシップ)協定への参加は中国ベトナム間の貿易取引には負の影響がないだろう。ベトナムが競争力を向上させることができればベトナムと中国の貿易関係はよりバランスのとれたものになります。
TPPは加盟国の経済に大きな変化をもたらす歴史的な協定とみられています。交渉は世界経済の40%を形成する自由貿易グループをつくるために、太平洋をまたぐ、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、アメリカとベトナムの12加盟国の間でおこなわれました。
6月下旬に行われたテッド・オシウス在ベトナムアメリカ大使の自邸での報道会見において、彼はベトナムはGDPの30%の成長が見込まれ、TPP加盟によって最も利益を享受する国であると述べました。
シンガポールを拠点とするアジア貿易センターのCEOであるデボラ・エルムスはテッド・オシウス米大使と同じ見解です。TPPが効果を発揮したのち、多くの外国人投資家がベトナムに押し寄せてくるだろうと語っています。
アメリカのワシントンDCに拠点を置くピーターソン国際経済研究所による最新のレポートでは、テッド・オシウスとデボラ・エルムスの談話をより明確にしています。アメリカへの靴と縫製品への免税のおかげで、ベトナムの輸出は17%から32%の税率が課せられている現在よりかなり有利になります。これはベトナムにとって最も大きな輸出市場であるアメリカ市場へのベトナムの輸出を後押しすることになります。
戦略国際問題研究所(CSIS)東南アジア研究室長のナイジェル・コリーは、TPPは靴と衣料品の輸出が2025年までに1650億ドルへ到達するのを助け、もしTPPがなければ、この関係は1130億ドルにとどまると述べました。
TPPはベトナム・アメリカ間の協力を促進
2013年後半、ハノイでのアメリカ通商代表のマイケル・BG・フローマンとのミーティングの中で、グエン・タン・ズン首相はTPPは二国間の協力関係を促進するための重要なプラットフォームになると強調しました。
2015年、越米関係正常化20周年を迎え、TPP交渉の決着は、二国間の経済協力を促進する重要な推進力になるでしょう。
アメリカはベトナムにとって重要なマーケットかつ最大の輸出相手国です。TPPはベトナムのアメリカへの輸出を加速します。これは、アメリカとベトナムの二国間だけの経済協力へ利益を与えるだけでなく、中国とのソフト戦略を模索するワシントンの取り組みにおいて重要な役割と専門家は述べています。
米政府当局者はまたTPPをアジアでの中国の成長力に対抗勢力をつくる方法として見ています。米越間貿易の促進は、両国にとって中国への経済的依存を減らうえで非常に重要な役割をになっています。そのことを通じて、両者は将来北京が経済力をてことして政治的利益を得ることを防ぐことになるだろう。
ベトナムのTPPへの参加は、ベトナムと中国の間の貿易関係にネガティブな影響を与えないばかりか、より釣り合いのとれた関係としてその改善を助けることになります。
ベトナムのような小さな経済規模の国は、世界や地域の大きな国々との調和とバランスのとれた経済関係の開発に非常に熱心です。アメリカのほか、ベトナムは中国、日本、EU、ロシアなどとの経済関係を強めています。
オーストラリアの東南アジア専門家であるカール・セイヤ教授によれば、ベトナム・中国間の貿易赤字へTPPが影響するとき、ベトナムがTPPに加盟したとき、それはすべての加盟国のマーケットに浸透させる利点を持つだろうとのことです。
つまり、ベトナムのTPPへの参加の利点は関税削減にあります。もし、ベトナムが中国産の原材料を使ってTPP加盟国用の物品を生産しているとき、その他のTPP加盟国からの原材料を使っている場合よりも高い税金が課せられます。
ベトナムと中国との経済関係は、基本的にはベトナムがTPPに加盟しても影響をうけません。いくつかの中国の起業家が語るには、彼らは引き続きベトナムへの投資から利益を得るだろうと考えています。そして、ベトナムのTPP加盟は、ASEAN諸国との包括的経済連携協定への中国の参加へは影響しません。
TPPと東海への中国の侵出
東海は太平洋とインド洋、ヨーロッパとアジア、中東とアジアを結ぶ主要な航路です。これは世界の貿易輸送の40%以上をになう世界で二番目に位置づけられる重要な国際航路であると考えられています。
日経アジアレビューは9月21日のコメントで、日本とアメリカのTPPを通じたアジアにおける地域経済と安全保障協力の強化の努力は、重要な海上貿易ルートである東海への中国の軍事的介入によって妨げられる可能性があると伝えました。
この重要な海上ルートの中心にあるのが、中国が違法に人工島を建設し軍事化をすすめている、ベトナムのチュオンサ諸島(国際的にはスプラトリー諸島として知られています)です。3本の3000mの軍用滑走路は北京が制空権と制海権を取るために建設されました。中国のこの動きは、特に日本経済のそして一般的にはその他のTPP経済の重要な海上ルートの安定性を損ないます。
中国の国際法への尊重の欠如と軍事力近代化は世界と東海周辺国の安全に対しての脅威をつくりだしました。
東海の領土紛争ではアメリカは中立の立場にたっていますが、アメリカは公に中国の東海での覇権主義的な活動について、国際航路と貿易の自由への大きな脅威であるとして反対を表明しました。
東海での対立やこのエリアへの中国の影響拡大が落ち着きの兆候を見せない限りは、将来、TPPの実現によってみこまれる結果の予想通りの達成は困難になります。ベトナムもこの負の影響に対して例外ではありません。
(以上訳。元サイト:Vietnamnet: TPP helps Vietnam balance economic dependence on China)
TPPを通じて、世界の均衡がより取れるようになることを祈っています。